放浪の剣士フォーヴァル~魔女の刃と大地の宝珠~六話
「………………はあ」
剣の呪いは解け、後はあの男を探すのみ。
しかし幾多の魔物を屠り捨て、”大地の宝珠”と呼ばれる古代の秘宝を手にしたという噂を最後に音沙汰は消え、辿り着いたばかりの潮風の香る港町で一人途方に暮れていた。
「何か、食べるものは……」
長旅の末に路銀を使い果たし、食料も尽きた。
道...
2021-12-08 06:48:05 +0000 UTC View Post
「………………はあ」
剣の呪いは解け、後はあの男を探すのみ。
しかし幾多の魔物を屠り捨て、”大地の宝珠”と呼ばれる古代の秘宝を手にしたという噂を最後に音沙汰は消え、辿り着いたばかりの潮風の香る港町で一人途方に暮れていた。
「何か、食べるものは……」
長旅の末に路銀を使い果たし、食料も尽きた。
道...
2021-12-08 06:48:05 +0000 UTC View Post
洞窟を根城に村を襲う山賊を始末したのは数日前、山を下り枯川沿いの荒野を抜けて、目的地である朽ち果てた古代遺跡に辿り着いた。
「この奥か……」
同じ大きさに削った石を積み上げたであろう家々の成れの果て、左右に立ち並ぶは崩れた柱、そして円形の広場には砂埃をかぶる井戸。
水は枯れているのか、覗きこんだ顔を埃混じり...
2021-12-08 06:45:48 +0000 UTC View Post
灰色の空、灰色の木々、灰色の大地……目眩すら覚えるほどの乾ききった風景の底で、着衣をくぐり抜ける肌寒い空気を吹き付けられたまま、ダレクより渡された革袋を開け、油紙の包を避けながら羊皮紙で作られた地図を取り出す。
「もう少し、か」
話の通り、剣には呪いが込められていた。
男の手指を切り落とし、女を愉悦の深みに...
2021-12-08 06:42:38 +0000 UTC View Post
「どうかしたのか?」
「何がだ?」
緑生い茂る薄暗い山道を半分ほど下った辺りでレシドスが静かに口を開く。
行為を終えて媚液の効果も途切れているはず……一方で官能の境地に浸る身を悟られたかと、無表情を装うが、唇に引き攣りを覚えて慌てて顔を逸らす。
「いや、何でもない」
魔女が事切れる間際に呪いをか...
2021-12-08 06:41:29 +0000 UTC View Post
「ここか……随分と時間がかかったな」
油布を先端に巻き付けた松明を手渡される。
赤く鮮やかな炎が、剣を振り回せるところまで人工的に切り開かれた洞窟の岩壁に二人の影を伸ばした。
「剣のある祭壇はここから真っすぐ行けばすぐだ。しかしまずは……」
レシドスが左側の通路に視線を移す、火をかざした先からは冷...
2021-12-08 06:40:02 +0000 UTC View Post
「…………」
自分を、母を踏みにじったあの男……ゾーグラスの足取りを追って三年、”海の遥か先、灼熱の巨竜を打ち倒した”という話を最後に手がかりは途切れた。
話が真実であれば、奴一人は何千、何万の兵を屠り捨てた魔物を上回る、それを少しでも埋めるために、フォーヴァルは数多の国を禁呪により滅ぼした魔女を斬り殺した聖剣の噂を...
2021-12-08 06:38:49 +0000 UTC View Post
「……誰かいるの?」
母に頼まれ、薬草レウトレガを摘むために鬱蒼と青緑の葉が生い茂る薄暗い森の奥へ向かったフォーヴァル。
丸めた背中を挟んで聞こえるは、太い黒幹の間を縫い進む風の音と、枯枝を踏み締める音。
封傷に効果が高い芽の部分を、心細さに震える指で忙しなく摘み取りながら、土埃で茶色く汚れた籠が青臭く緑も薄い若芽...
2021-12-08 06:36:08 +0000 UTC View Post
「あ……」
買ってやった銀のピアスが電灯に煌めく、穂乃香は不安げに眉尻を下げて葉を落とした茂み越しにベンチへと目線を向けていた。
七海もさすがに見られたくないのかボタンを外す手を止める。
「どうしたの?」
「先輩と、美雪ちゃんがいたような……」
「……気のせいだろ。ほら、早く脱いで」
...
2021-12-08 04:55:16 +0000 UTC View Post
初めて見た恋人の裸体に目は釘付けに、桃色に染まる素肌が布団に隠れると我に返り、カーペットの上に置かれていたクッションを乱暴に蹴飛ばしながらベッドへ向かう。
手足の震えが止まらず、歯も折れんばかりに食い縛るが、当の直久は自信たっぷりに唇の端を歪ませていた。
「何だ、ずいぶん遅かったな……ママに相談でもしてたのか?」
...
2021-12-08 04:53:48 +0000 UTC View Post
肌を舐め撫でる冷風のおかげで多少は落ち着きを取り戻す、多少火照りを残しながらも立ち上がった穂乃香は、クローゼットに備え付けの収納ボックスから下着を引っ張り出した。
落とした視線の先には花柄のレースが精緻に施されたお揃いの白い薄布、魁人と初めてデートするときに着た白いワンピースと一緒に買ったものだった。
いつかは先輩と……その...
2021-12-08 04:50:59 +0000 UTC View Post
土曜の昼下がり……真上近くに居座る太陽の直射日光が窓から室内へと入り込む、去りゆく涼風を引き止めるようにライトグリーンのカーテンを閉めると、ガラス越しの景色と一緒に肌を炙る熱が遮断された。
残った宿題を理由に一人で留守番していたが、机の上に開かれたノートにはどこまでも白。
どうにも集中できず、穂乃香はベッドの上にうつ伏せにな...
2021-12-08 04:45:36 +0000 UTC View Post
「…………遅れちゃって、ごめんなさい」
「いいよ。しばらくは暇だから」
遠慮がちにドアを開く音、次いでパイプ椅子を引く音が。
充満する気まずさがキーボードを叩く指に強張りと震えを押し付ける。
遊園地で見せた解れた髪と汗ばんで紅色に染まった頬が脳裏を離れようとしない。
途中で抜け出した理由も聞けないまま一週間、...
2021-12-08 04:37:51 +0000 UTC View Post
「ただいま」
「…………………………おかえり」
「七海、もう帰ってたのか。ずいぶんと早いんだな」
「うん……」
リビングの白いソファーに横になっていた七海は、室内に入ってきた魁人には目もくれず、ぼんやりとテレビを見ていた。
映っていたのはニュース番組、彼女の好みとは程遠いもののはずだ。
「今日は部活...
2021-12-08 04:33:43 +0000 UTC View Post
取材の甲斐なく、当然かもしれないがUFO目撃に関して有益な手がかりは得られなかった。
それでも記事は書こうということになり、穂乃香が担当しているのだが……
「はあ……」
公園で撮影した画像を見ると、直久の舌が陰裂の中に甦り、パイプ椅子の上に置いたクッションを敷き潰すお尻が左右にくねってしまう。
望まない舌戯で...
2021-12-08 04:31:17 +0000 UTC View Post
「穂乃香さんだ、どうしたのかな……」
夜、机に向かって宿題をしていると穂乃香からメールが来た。
それと同時にせわしない足音が聞こえてきた。
「お兄ちゃんってさ、バスケ部の取材とかもしてるの?」
「ノックくらいしろよ、まったく」
「あれー、ノックしなといけないなんて、何かやましいことしてたりして」
「...
2021-12-08 04:21:39 +0000 UTC View Post
「…………」
新聞部部室、魁人の作業している背中を目で追ってしまう。
両の瞳では彼の後ろ姿を見ながらも、思い出すのは直久に無理やり処女を奪われたこと……昨日のことなので、目を閉じた先に浮かぶ光景も鮮やかだった。
話の合う異性の友人として信頼していた直久に、ベッドに身体を縛り付けられ、強引に身体を暴かれて、いつか魁人...
2021-12-08 04:20:02 +0000 UTC View Post
昼休み、遮る物のない屋上は強い日差しに照らされており地面のコンクリートも座れるかどうかというところまで温められていた。
しかし吹く風が心地よく、日陰になっている入口の扉近くを背にすれば教室よりもずっと涼しかった。
全てが騒がしくなる時間帯だが、人のいないここだけは静まり返っていた。
動いているのは二人と、青空にまばらに...
2021-12-08 04:18:31 +0000 UTC View Post
穂乃香が電車で痴漢されてから二週間後、皮肉にもあの事件がきっかけで二人の仲はさらに接近することとなった。
ありふれた先輩後輩の間柄だったはずが、やたらと甘えてきたり行動を共にしたがることが多くなった。
おそらくまだ心の傷が癒えていないのだろう、そして降りかかった災難を共有できるのも自分しかいないのだろう。
「僕に、...
2021-12-08 04:10:21 +0000 UTC View Post
穂乃香が新聞部に入部してから三週間が経った。
記事を書かせてみたり、単独で取材に向かわせたりとあれこれ試してみたが、入部直後の自分では到底足元にも及ばない水準にまで達していた。
「できましたね、先輩!」
穂乃香が長机に広げているのは、完成したばかりの新聞だった。
魁人が一人でやっていたときは一ヶ月に一回の...
2021-12-08 04:06:07 +0000 UTC View Post
夕暮れの住宅街、朝洲直久は隣のクラスの少女、芦澤穂乃香の後ろ姿を舐めるように見つめていた。
オレンジ色の絵の具を塗りたくった世界に映える穂乃香の艶やかな黒髪、暗色と光の輪の対照が直久の目を射抜く。
「…………」
二つしかない足音が外に誰も居ないことを教えてくれる。
穂乃香が振り向く、ずっと後をつけていたの...
2021-12-08 04:03:45 +0000 UTC View Post
変わり映えしない退屈な毎日にも楽しみはある、男は商店街の片隅でマッサージ店を営んでいた。
表向きは指圧を中心とした平凡な店だが、中学生と高校生は初回無料のうえその後も格安料金ということで学生を中心に人気を集めていた。
「あ、あの……失礼します」
ドアが開き、静かに閉じた。
音のするほうを向けば、駅近くの中...
2021-12-08 03:34:16 +0000 UTC View Post
「…………先輩っ、先輩ったら」
遠くで育美の声が聞こえるが、涼はそれに気が付かず、腕を引っ張られてやっと我に帰った。
「なんだよ、引っ張るなって」
「だって、返事してくれないから……」
育美のほうを向くと、頬を膨らませてむっとした顔つきをしていた。
「ああ、悪い悪い。で、何の話だっけ?」<...
2021-12-08 03:03:58 +0000 UTC View Post
「ふう………これで終わり、と…」
生徒会役員も楽じゃない、平の役員でもすべきことはたくさんある。
新崎育美は、小さく息をつくと目の前のパソコンから視線を外した。
鏡のほうを見ると、自分が心なしか疲れたような顔をしているのがわかる。
乾いた目をこする、大きなくりくりとした瞳にも疲労がにじんでいた。
小さくため息...
2021-12-08 02:55:43 +0000 UTC View Post