バスっ!!
ナックルの柔いスポンジが、ワセリンで濡れた私の顔面を押しつぶす。
腫れて熱い皮膚の表面を、由梨のグローブが滑るように、燃えるように殴り抜けた。
「・・・っ・!」
私の軌道を完全に読んだ、見事なカウンター。
私の十八番の技を奪われた感じがして嫉妬が止まらない。
のけぞる頭を振って、意識のもやを振り払おうとする。
直撃は避けた・・が、ダメージを蓄積した私には、あまりにも痛い一撃だ。
このラウンド、パンチを喰らいすぎてしまった。
認めたくないけど・・由梨のパンチの精度はラウンドとともに上がっている。
悔しい。
すごく悔しい。
彼女の目が、顔前に構えた二つのグローブの隙間から見える。
かすり傷の多い、中性的な顔が涙で濡れている。
一人のボクサーの真剣な眼差しが私を見ていた。
追撃のパンチが顔面を破壊するのをゆっくり認識しながら、私は自分の物思いに固執する。
昔から泣き虫だった癖に、いつからそんなかっこいい目をするようになったんだろう。ずっと、いつもそばにいたのに気が付かなかった。
・・リングの上で、本気で拳を交わさないとわからないことがあるんだ。
背中に感じるラバーのコーナーマット。
汗でぴったりと張り付く逃げ場のない感触と、内臓に深く埋められたグローブ。
潰れた胃袋から喉を急上昇で登ってくる胃酸の苦い味。
由梨のパンチを受け止めるたび、柔らかい口の中に、苦い血の味が広がる。
『連打連打連打!!
古川選手、即死級の鋭いパンチを棒立ちの内田選手に何度も杭のように打ち付ける!!まさにコーナーへの磔の刑!!内田選手、危ない!」
・・・ドッヂボールを何回も顔面にぶつけられてるみたいだ。
苦しいはずなのに、実況の声も、周りの音も全部無くなって、そう他人事に感じた。
ふと、小学生の放課後に由梨と遊んだ記憶が蘇る。
ボールを当て合う鬼ごっこをした、懐かしくノスタルジックな思い出。
・・あの頃はおち〇ち〇がついてるだけでクラスの皆にひどくいじめられたなぁ。
だからいつも二人で遊ぶしかなかったんだよね。
新しい体育館の、木の匂いさえ鮮明に思い出せる。
由梨の矯正した前歯がむき出しになって、にっこり笑っていた。
なんだろう。
家族も友達も、お客さんも、みんなが見ている舞台。
恐ろしいボクシングをするリングの上なのに、すごくリラックスする。
またぐらで跳ね回る、硬くて熱い私の肉棒。
由梨のパンチが私の頭をバカにする度に、どんよりとした快感が腰の奥に溜まって大きくなっていく。
由梨のパンチ・・・すごく気持ちいい。優しく、体の奥まで犯されてるみたい。
快感が上り詰め、それを放出する準備が整うと、
すべてを由梨に委ねるように、だらりと私の両肩が落ちた。
顎が天井に向かって打ち上げられるのと同時に、
由梨に向かって、私の睾丸で作られた熱い精液を激しく打ち出した。
快感で頭が真っ白に飛ぶ。
バゴッ!! ドゴッ!!!
止まらない激しいパンチの爆弾で、
頭蓋骨の中で射精の快感と羞恥が激しくシェイクされる。
(もう意味が分かんないくらい・・気持ちいい・・!)
観衆の目も、勝敗も、もう全部どうでもいい。
ボクサーとしてのプライドも、すべてここに置いていこう。
暖かい黒い穴に落ちていくように、私の意識はかすんでいく・・
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次に気が付くと、私は由梨の胸の中にいた。
「ごめんね・・ウッチー・・ごめん・・!」
リングマットにお尻をつけて、コーナーにもたれている。
会場の割れるような歓声と拍手。カウントは・・・流れない。
「・・そっか。
おめでとう、由梨。 ・・あんたの勝ちだね。」
由梨のグローブが、私の背中を優しく抱いている。
私も、ありったけの力で、汗でぐしゃぐしゃのその体を抱き返す。
殴り合いに疲れた私たちは、
お互いの境界がわからなくなるほど、長い間そうしていた。
差分
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いつもご支援ありがとうございます。
投稿ないがしろにしておりすみません。最近仕事忙しすぎてやばいですー、、
せめて20時には帰って絵が描きたい、、
20代の人生において一番貴重な時間、これを労働に費やすってほんともったいないですよねー
Zikra rizki
2025-11-16 13:41:21 +0000 UTC