あれはセトくんがいつもぞんざいに扱っている壺!
Added 2019-04-25 15:53:42 +0000 UTC◇前回のあらすじ◇
乱々「珠烏は壺中の天地というお話を知っているかい?」
珠烏「それぐらい知ってるよ!壷の中には楽園が広がってるんだよねー」
乱々「まあ、そのへんから転じてお酒を飲んで夢見心地になる、という意味合いもあるのだけど…
費長房は羽化登仙できなかったってのに、皮肉なものだねぇ」
◇
珠烏「ここは…どこだろう?
えとえと、私はさっきまで何をしていたんだっけ?
ほわんほわんほろほろ~」
珠烏『むっ!あれはセトくんがいつもぞんざいに扱ってる壺!』
セト『ふんふんふーん、いっい湯~だ~な~あははー』
珠烏『肌身離さず雑に扱ってたけど、流石に入浴中は手放すんだね。
今がチャンス、中に何が入ってるか調べ…きゃあっ!』
珠烏「壺を覗きこんだ時に、体のバランスを崩しちゃって、それから…
じゃあ、ここは壺の中…?壺中の天地のお話通りなのかなあ…?
……それにしては、なんにもないところだけど……」
??「…客人?」
珠烏「あれっ、セトくん?お風呂に入っていたはずでは…」
??「私はセトではない……たぶん」
珠烏「あっ胴体のほうのひとだね!」
??「そうでもない…かもしれない」
珠烏「じゃあ瀬戸くんでいっかー」
瀬戸「待って話を聞いて、自分語りさせて」
珠烏「私ね、外に戻りたいの!どうやったら壺の外に出られるかなあ?」
瀬戸「んん…押しが強い。まあいいや。
この護符を持っていくといい。これで鬼神、もとい異邦の神の力を扱えるようになる」
珠烏「ありがとー!」
瀬戸「今のままの君では扱えない。幸い、ここは時の流れが緩やかだから
しばらく練習していくといい」
珠烏「えーすっごい親切!
……あれっ、でもこの話どこかで聞いたことが、あるような……
ううん、頭がズキズキしてきた…」
◇ ◇ ◇
珠烏「よーし、やっと出られたぞぉ!
って、あれ。もらった護符がない…」
セト「おい」
珠烏「あーセトくん久しぶり!髪伸びた?プライド高くなった?」
セト「なんで風呂上がりそうそう罵倒されねばならんのだ!」
珠烏「いやー数ヶ月ぶりだから、ちょっと懐かしくて!
そっくりさんは側に居たけど、セトくんじゃないし…」
セト「言っている意味がよくわからん…」
珠烏「話変わるけど、私の護符知らない?ちょっと失くしちゃってー」
セト「護符~?」
珠烏「鬼とか神とかそういうのを従えられるの!頑張って特訓したのに…」
セト「……なるほど。鳥公、護符はないがこういうのはどうだ?」
珠烏「えっ?これって…あれっ…これ…何だっけ…」
セト「お前なら、この板を扱えるかもしれない。
この板に記されている12の奥義を、理解できたその日にはお前の願いが叶うかもしれんぞ」
珠烏「わ、私の願い…?それって」
セト「外に出る、だろう?」
珠烏「えっ…ああ、うん。そうだね、外の世界に帰らないと!」
◇ ◇ ◇
珠烏「よ~し、やーっと外の世界に出られたぞー!
って、あれれ、セトくんからもらったアイテムがない!これじゃあ私…」
紫「落とし物はこちらですわ」
珠烏「あっ!それ私の!」
紫「貴方、随分と微睡んでいるようでしたから。
そろそろ夢から醒めて、現を見て幻に戻りましょう?」
珠烏「……あれれ、これって、夢なの?」
紫「ええ、まあ。エメラルド・タブレット、でしたか?
そちらは先の異変で私が預かったままよ。
だから、二度も同じものをあの悪神から貰うことなんてありえないでしょう?」
珠烏「そっかー、夢かぁ…」
紫「さあ、夢から醒めなさい。貴方の居場所はここではないのよ」
◇ ◇ ◇
珠烏「ただいまー」
セト「…? おかえり?」
珠烏「いやー、おかしいと思ったんだよね―。
エメラルド・タブレット、巫女達に取り上げられちゃったんだもん。
こんなところにあるわけが…」
セト「あるぞ」
珠烏「あーれー?」
セト「肌身離さず持ち歩けと言っただろうが。だから無くすんだ。
今腰掛けカバンを見繕っているから―――」
珠烏「これ、夢かー」
◇ ◇ ◇
珠烏「ただいまー」
瀬戸「なぜ戻ってきた…」
珠烏「いやーよくわかんないけど、外に出たっていうのが錯覚だった?というか?」
瀬戸「そ、そうか…」
珠烏「ま、とにかくもうちょっと修業を重ねて、
自力で脱出できるようにならなきゃいけないのかも」
瀬戸「そうか、じゃあこの護符を…」
珠烏「ありがとー! えへへ、この護符がないと…
んっ、確か乱々ちゃん、こんな話をしていた気がする…ほわほわほろろろ~」
乱々『…壺公からもらった護符によって奇跡を起こしていた費長房は、
護符を無くしてしまい、哀れ鬼神に殺されてしまいました、ってオチなのさ。
なんとも後味が悪いというか、力に溺れた者の末路というか――
寝酒が悪くなるお話なんだねえ』
珠烏「…これも夢かあ!」
◇ ◇ ◇
珠烏「…おっ、あれはセトくんがいつもぞんざいに扱っている壺!」
セト「ふんふんふーん、いっい湯~だ~な~あははー」
珠烏「肌身離さず雑に扱ってたけど、流石に入浴中は手放すんだね。
今がチャンス、中に何が入ってるか調べてみようっと!」
瀬戸「いえーいぴーすぴーす」
珠烏「うわっびっくりした!腕腕だけが動いてる~!」
瀬戸「セトに四肢もぎ取られて困ってるんだよ~う」
珠烏「あんま困ってなさそうだなぁ…」
瀬戸「異変も失敗したんだし、
そろそろ私の身体から出ていってほしいんですけどねー」
珠烏「それはちょっとかわいそ…う…」
乱々『壺公は天界で罪を犯したため、地上に落とされた仙人だったのさ。
けれど、その罪が許されて壺公は天界に戻れるようになった。
…費長房は、壺公に師事した。なぜって、天界には仙人しか行けないからね』
珠烏「ああ、やっぱりこれも夢かあ」
◇
乱々「結局、費長房は壺公の出した最後の試練を超えられず、天に登ることはできなかった。
……おーい、珠烏聞いてるかい?」
珠烏「うん…」
乱々「壺中の夢に手を伸ばした者の末路には悲劇しかないのか、
それとも他人の力に頼ってばかりの者には因果応報とでもいうのか…
いろいろ考えさせられる話だと思わない?」
珠烏「どうして、費長房は天界に行きたかったのかな」
乱々「おおかた壺中が心地よくて味を占めたんだろう。
人間は貪欲だからね」
珠烏「そう…かな」
乱々「まあ、最初は下心があったのかも知れないけど。
どこか心の片隅に、情はあったのかもしれないね」
珠烏「そうだと、いいなあ」
おわり