並び咲く純白のユリの花 #7 導きの帰結
Added 2024-09-27 09:00:00 +0000 UTC7.導きの帰結 梨花は、奏子に促されるようにしてタクシーを降りた。 「ほら、ここだよ」 奏子が正面の建物を指し示した。 高い塀に囲まれた、大きな建物。 塀の外には緑地帯が設けられ、植えられた木々が外からの視線を遮っている。 そこは隔離のための施設だった。 「ここって……」 ぼんやりとした頭で梨花は建物を見渡した。 そこがどういう場所なのか、梨花は知っている。 (わたし、これからここに入るんだ……それから……) そう思うと、梨花の鼓動が高鳴っていく。 「おいで」 奏子に促されて、梨花はよろよろと敷地に足を踏み入れた。 本来ならそこは、関係のない人間は立ち入れない場所だろう。 だが敷地の門を通り抜けるときも、建物に立ち入るときも、誰にも何らのチェックも受けることはなかった。 通常であれば、考えられないことだ。 奏子はセキュリティを通過するためのIDカードすら持っていたのだ。 だが今の梨花にはその異常さをぼんやりと認識できたに過ぎなかった。 ------------------------------- 梨花が奏子に導き入れられたのは、施設の中の一室……入所者のための病室だった。 部屋の中央がパーティションで区切られており、その手前にベッドが置かれている。 それ以外に室内には何もない。 「さ、ここに座って」 梨花は、奏子の言う通りにベッドにちょんと腰掛けた。 梨花にはもうわかっていた。 奏子の言う通りにすればよいのだ。 そうすれば、自分は何からも自由になれるのだ。 奏子は梨花の横に、着替えの入った籠を置いた。 「あ……」 籠の中に目をやると、梨花はかすかに呟き声を漏らした。 籠の中には入所者が身につける病衣と、まるで飾り気のない下着、それから分厚いタオルのようなものが入れられていた。 どれも見た目から清潔とは見えず、それどころかつい先ほどまで着用されていたかのような感じに見えた。 「さ、それに着替えて」 梨花は、顔をかすかに赤らめ、どこか放心したような表情でしばし籠の中の着替えを見つめていた。 「え……っと……」 梨花は困惑した表情で奏子の顔を見上げた。 どうすればよいのか、わからないのだ。 「あ、そうか……ごめんね梨花。自分ではムリだよね」 梨花はこくんと頷いた。 奏子に全てを委ねるのが、今の自分にはふさわしいように思えた。 「大丈夫だよ。梨花。私が着替えさせてあげるからね」 奏子は梨花のすぐ側に近寄ると、優しく上衣に手をかけた。 「ほら、バンザイして」 梨花は奏子の言葉に素直に従って、両手をあげた。 その様子は小さな子どもが母親に服を着替えさせてもらうのと同じだ。 やがて着ていた衣類を全て取り去られ、やや上気した白く美しい肌が、全身顕わになった。 見とれてしまうほどの美しい体つきだ。 ただひとつ、股の間から突き出しているどす黒い色の異様なモノを除いては。 奏子が籠に手を入れて、下着を取り出した。 介護に伴う諸々の行為がしやすいように前開きになった、汗を吸い取りやすい木綿の、なんの飾り気のないタンクトップだ。 梨花は、これから起こることを想像してほんのわずか体を震わせた。 籠の中の衣類を身につけてしまえば、もう見た目の上ではここの入所者と少しも変わらなくなってしまうのだ。 じゅく……と、梨花の股間が疼きはじめる。 奏子は優しい手つきで、梨花に下着を着せかけた。 下着はやはりつい先程まで誰かが身につけていたようであった。 じっとりと汗が染み込んだ布地が、肌に貼りつく。 自分のものではない女性の体臭……垢交じりの体臭が梨花の鼻腔を満たす。 「あ……はあ……」 自分自身の体臭が塗りつぶされ、まるで自分がその持ち主に変えられていくかのような錯覚に、梨花はたまらず吐息を漏らした。 その上から着せかけられた生成りの病衣にも匂いはたっぷりと染み込んでいる。 見た目も匂いもすっかり施設の入所者の姿に変えられてしまったと思うと、梨花の気持ちはますます昂っていく。 「さあ、横になって」 奏子に促され、梨花はベッドに仰向けに横たわった。 奏子が病衣の長い裾をまくると、いったんは隠された梨花の股間が再び露わになる。 そこに目をやった奏子の口元に笑みが浮かんだ。 「あれ?梨花ちゃん。駄目でしょ、まだおむつを履いていないのよ」 梨花の股間に貼り付いた肉色のモノのヒダの隙間から、愛液が漏れ出すように垂れ始めていた。 内ももを垂れ落ち、病衣の長い裾をわずかに濡らす。 「大丈夫よ。梨花ちゃんはもう赤ちゃんと同じなんだから」 奏子はハンカチを取り出すと、梨花の内ももに優しく押し当てて拭いとる。 ハンカチが、屹立した梨花のモノに触れ、梨花はたまらず声をあげた。 「ヒャぅ……」 横たわったまま奏子のなすがままに両目を潤ませる梨花の足を優しく開くと、奏子は最後に籠に残ったものを取り上げた。 「さあ、お粗相しても大丈夫なように、おむつをあててあげますからね」 赤ん坊に言い聞かせるように優しい調子で奏子は言った。 言いながら梨花のお尻の下に手を入れて、わずかに持ち上げ、その下におむつの布を滑り込ませる。 位置を整えてからお腹の上でマジックテープを止め、手早くビニール製のおむつカバーを履かせてしまう。 「さっ、これでよし、と」 奏子は満足そうな調子でそう言ってから、ぽんと手をはたいた。 それから、ベッドに横たわる梨花の顔を覗き込む。 「梨花ちゃん良かったね。これでもう他の入所者さんと見分けがつかないよ」 梨花は頬を恥ずかしそうに赤く染めて、体をわずかによじらせた。 おむつを履かされた時にその柔らかい布地に擦られたせいで、そこから湧き上がるもどかしい感覚に梨花は苛まれているのだ。 奏子は梨花の耳元で囁いた。 「ね、梨花ちゃんはもうなんにも気にすることはないんだよ。何も考えず、したいままにしても、いいんだよ」 奏子の言葉に突き動かされるように梨花はおむつの上から梨花のモノに刺激を与えようと、そろそろと手を伸ばした。 奏子は優しくその手を制いた。 「あ……」 梨花は切なげな表情で奏子の方を見た。 「梨花はもう何もしなくてもいいんだよ。私が、手伝ってあげる」 そう言うと奏子は、右手を梨花のおむつの上に置いて、動かし始めた。 おむつの厚い布越しに与えられる刺激は、直接擦るよりもずっと鈍い。 だが閉鎖病棟の入所した重度の知的障害者の姿になりきって、おむつに隠された醜い一物をその上から友人の少女に撫で擦られるという常軌を逸した状況に、梨花の興奮はかつてないほど高まっていった。 「あ、あタシ!……おむつ……はいて……かなこに!……」 興奮に比例して判断力を曇らされた梨花は、脳裏に浮かんだイメージをそのまま言葉に発しながら、狂ったように体をくねらせ始めた。 「うあ……ひゃ!…あ、あ、あたしぃ!……」 下半身への刺激によって感じる快感が、今までにないほど増幅されて頭の中を駆け回る。 その奔流が容赦なく梨花の意思を押し流していく。 「我慢しなくて、いいのよ……頭が真っ白になるまで気持ちよさを、味わって、いいのよ」 執拗に刺激を続けながら、奏子は梨花を追い詰めていく。 梨花は抑制を完全に失い、白目を剥いて獣のように意味のない言葉を叫びながら幾度も体を痙攣させた。 十分に梨花を攻め尽くした頃合いを見て奏子は、手の動きを止めた。 「……ね、どうする?もっとチ☓ポ、擦って欲しいの?そうすれば完全に狂って、このままずっとここで暮らすことができるんだよ?」 「……あ、あう……」 涙を目いっぱいに湛え、呆けたような、切ないような表情で、梨花の目線は彷徨うように揺れ動いていた。 「ね?どうするの?梨花ちゃん。今だったらまだ、間に合うよ。今すぐ梨花ちゃんのその汚いチ☓ポ、引き抜いちゃおうか?そうすれば、元の通りの梨花ちゃんに、戻れるんだよ。元の通りの生活に、戻れるんだよ」 二人の間にしばしの沈黙が流れた。 「……うあ……おねがい……かなこ……あらしの、ちんぽ、もっと……こすって……あひっ……おねがい、かにゃこ……!」 快感を止められたもどかしさに耐えかねた梨花は、堰を切ったように懇願の言葉を並べた。 奏子は笑みを浮かべて頷いた。 「そう、それでいいのね。わかった。梨花ちゃんの望み通りにしてあげるよ」 止めた手が、再び動き始める。 「あ!……あァァァッ……」 再び起こった快感に梨花は歓喜の嗚咽を漏らした。 よだれを垂らしただらしない口元に、狂ったような笑いが浮かぶ。 「ほら、もっと感じて!頭の中のいらないものを、きれいサッパリ!洗い流すの!……」 「うひ……おひひ……」 最後に異様な声をあげると、ビクビクと全身を痙攣させながら梨花は悶絶した。 その頭の中は文字通り真っ白になっていた。 梨花の反応が止んだのを見て取った奏子は手を止めた。 梨花の顔を覗き込む。 「おーい……」 狂った笑みを顔に貼り付け、その目は完全に焦点があっていなかった。 意識はあっても、完全に放心していた。 「……すっかり、プッツンしちゃったみたいだね……」 奏子は、改まるように静かに息を吐いた。 しばしの沈黙が室内を覆う。 「……ね、梨花ちゃん。ひとつだけ、教えてあげる」 真面目な表情を作ると、奏子は梨花に言い聞かせるような口調で話し始めた。 「あなたの股の間のソレが制御しているあなたの頭の中のナノマトリクスは、あなたの願望を強めるし、報酬系や出力に作用するけど、あなた自身の意思に反することを決して強制してはいないの。それに、あなたの脳内に重度知的障害者と同じニューロネットを構築したとしても、あなた本来の脳機能は依然としてそこに存在するのよ」 「……つまり、あなたには今のあたしの言ってることも、ちゃんと伝わっているはずなんだよ。だから……」 「……だから、これはいつでも、あなた自身の意思で止められるということは、覚えておいてね。前に説明した通り、あなたが履いているおむつの下に隠れたモノを抜き取りさえすれば……いつでもあなたは正気を取り戻すことができる」 話終わると奏子は、梨花の顔をじっと見つめたまま、しばしの間、その様子を窺った。 だが梨花の目は向けられた視線に答えることは無く、相変わらず虚空をさまよっていた。 奏子はくすりと笑った。 真実を伝えたからと言って、何かが変わるわけではないことは、奏子にはわかっていた。 そしてそのことは、もちろん梨花も理解している。 奏子は静かにベッド脇から立ち上がった。 ひとつのタスクが完了しても、まだ奏子にはやり残したことがあるのだ。 (つづく)