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しばりしばられ 9 その② 明るみになった縄

「ふぅ…気持ちいいね〜」

「そうですね…」

公園に着いた2人は木陰のベンチに腰をかけた。この緑で囲まれた公園は住宅街の近所にありながらも意外と閑散としていた。公園内ではベンチに腰掛けた咲椋たちの他に水風船で遊ぶ子供たちとカップルが数組いる程度だった。

一息ついたところで沙希が話を切りだした。

「それでさ、気持ちは少し楽になった?」

「はい、だいぶ楽になりました。本当になんとお礼を言ったら良いか…」

「いやいや、当然のことをしただけだよ。困っている人を見るとほっとけなくてさ。」

沙希はニコッと笑って返した。

「凄いですね…困った人を助けるなんて…。」

「そ、そうかなぁ…」

少し照れながらも沙希は続けた。

「たぶん…友達の影響もあると思うよ。」

「お友達ですか…?」

咲椋の質問に対して沙希は恥ずかしがりながら答える。

「私ね、結構いろんな事件に巻き込まれることが多いんだよ。」

「事件…?」

「簡単に言うとね…その…悪い人に誘拐されたりして縛られたり…」

「し、縛られたり!?」

「ちょ…声が大きいよ…!」

「すみません…(羨ましい…!)」

沙希はあたりをキョロキョロ見渡しながら続ける。

「そう言う事件に巻き込まれた時にね、いつも私の友達が助けに来てくれるんだ。」

「凄いですね。」

「うん。それに一緒に捕まった時は励ましてくれたりしてさ、そうしているうちに私もそんな風になりたいなって思うようになったんだよ。」

「そんなことがあったんですね。すみません、辛いことを思い出させちゃいましたよね…。」

咲椋は申し訳なさそうに沙希に告げる。すると沙希は「いやいや大丈夫だよー」と笑顔で続けた。

「今になって思い返してみると…事件に巻き込まれたからこそ生まれた友情もあったと思う。」

「つまり…麻縄が沙希さんたちの友情をより強固にしてくれたのかもしれませんね。」

「あはは、上手いこと言うね〜」

ふと沙希は首を傾げて咲椋に尋ねる。

「そういえばよく“麻”縄だって分かったね」

「あ……あの、テレビ…そうテレビのドラマで女優さんが麻縄で縛られてるのを見てて…」

「なるほど!」

沙希が納得したのを見て咲椋はホッと胸を撫で下ろした。

「沙希さんは良いお友達を持って幸せ者ですね。」

「うん。光姫に友梨、和奏に優奏ちゃん、みんな自慢の友達だよ。」

「そのみなさんも沙希さんが友達でとても幸せ者ですね。」

「あはは、ちょっと照れちゃうなぁ」

沙希は頰を紅潮させた。そんな沙希を見て咲椋はクスッと微笑む。

「沙希さんって可愛いですよね」

「っ…!からかわないでよ〜」

「あはは、可愛いですよ〜」

「むぅ〜」

そんな会話をしていると突然の破裂音が咲椋を襲った。

〈パァン!〉

「きゃ!」

「咲椋ちゃん!?」

見ると咲椋の体はびしょびしょに濡れていた。どうやら水風船を投げ合って遊んでいた子供たちの流れ弾が咲椋にぶつかってしまったらしい。

「ごめんなさい…。」

1人の男の子が咲椋に頭を下げていた。

「大丈夫だよ。次からは気をつけて遊んでね。」

「はーい。気をつける!」

男の子は元気よく返事をすると仲間の元へと戻っていった。

「うわぁ…びちょびちょだよ…。まぁ暑かったしちょうど良いかな。」

「…………。」

「沙希さんどうかしましたか?」

沙希はジーッと咲椋を見つめていた。

「咲椋ちゃん…服の下……」

「え……」

咲椋は自分の上半身に視線を落とす。

「っ…!」

咲椋のTシャツは水によってピッタリ身体にくっつき、身体に巻き付けてある縄の形がくっきりと浮かび上がっていた。

「ち…違うんです…!」

咲椋はその場にしゃがみながら身体を抱える。

「背中にも…」

「え…」

しゃがんだところで背中側の縄を隠すことはできなかった。

「(沙希さんに見られた…。嫌われた…。幻滅された…。変態って…服の下が…。)」

頭の中がぐるぐる回り、咲椋の瞳からは涙が流れた。

「こっち来て。」

そんな咲椋の腕を引っ張り沙希は公園の茂みに身を隠す。

「ここなら他の人には見えないよ。」

「はい……。」

「見られたくないもんね。」

沙希はそっと咲椋の肩に手を置いた。

「はい…。」

「この拘束は…?」

沙希は真剣な眼差しで咲椋に尋ねる。

「昨晩…自分で縛りました……。」

咲椋は嫌われるのを覚悟で正直に答えた。沙希にだけはたとえ嫌われても正直でいたいと思ったからだ。

「自分で…」

「はい…。」

沙希の反応を見るのが怖くて咲椋は目を閉じる。

「なーんだ、良かった〜」

「ふぁい?」

予想外の沙希の反応に間の抜けた返事をしてしまう。

「てっきり悪い人に脅されて縛られてちゃったのかと思ったよ〜」

「えと…軽蔑とか…しないんですか……」

咲椋は不思議そうに尋ねる。

「縛られるのが好きなくらいで咲椋ちゃんのこと嫌いにならないって」

沙希はニコッと笑顔で続ける。

「咲椋ちゃんは縛られるのが好き?」

「…はい。」

「それで亀甲縛りをできるまで練習したんだよね?」

「はい、本とか読んで…」

「それってとても凄いことだと思うよ。だって好きなことに一生懸命に取り組めるんだからさ。」

「沙希さん…」

咲椋の瞳からは再び涙が流れた。この涙は先ほどの涙とは違った。

「この亀甲縛りも良い縛りだね〜。六角形も綺麗だよ。」

「ずっと練習してたので…」

「うん。よく分かるよ。」

ここで咲椋はあることに気がついた。

「もしかして…沙希さんも!?」

「あはは…」

沙希は照れながらもTシャツをたくし上げる。

「綺麗…」

Tシャツをたくし上げるとそこには沙希の素肌と綺麗な麻縄でできた六角形があった。

「ここからなら人目につかずに私の家まで行けるよ。そこでゆっくり話そうか?」

「沙希さんのご家族は…?」

「今日はみんな夜まで帰ってこないから安心して大丈夫だよ!」

「はい!」

そして2人は沙希の家まで向かった。

______________________________

「すみません…着替えまでお貸し頂いて…」

「気にしないで〜」

咲椋の服は水風船によって濡れてしまったため沙希の服を貸してもらいそれを着用していた。

現在二人は沙希の部屋にてテーブルを囲んでいる。そのテーブルの上には沙希と咲椋の身体を縛っていた縄が並べられていた。

「ちょっと触ってみても良い?」

「は、はい!」

沙希は咲椋の縄を手に取る。沙希はその縄をスリスリと触っていた。

「お手入れとかしているの?」

「ネットで調べてやってみました…。」

「とっても綺麗な縄だよ。」

「ありがとうございます!」

自分の縄を褒められるとなんだか嬉しい。咲椋から自然と笑みが溢れる。

「沙希さんの縄も触って良いですか?」

「うん、どうぞ。」

咲椋は沙希の縄を手に取り、先程の沙希と同様に縄の触り心地を確認する。

「すごい…とっても滑らか…」

「えへへ、嬉しいなぁ」

「コレどうやってるんですか?」

「もし良かったら今度縄のお手入れするから一緒にどう?」

「良いんですか!?」

「もちろんだよ〜」

「是非お願いします!」

咲椋は自分の縄をギュッと握りしめて小さく囁いた。

「もっと良い縄にしてあげるからね…」

それを聞いた沙希は微笑み、咲椋に質問をぶつけてみた。

「咲椋ちゃんはいつから縛りに興味が…?」

咲椋は少し恥ずかしがりながらも口を開いた。

「少しえっちな小説で“緊縛”の描写が出てきて…それを調べ始めたら…その…ハマってしまって…」

「そしていつの間にか自分で自分を縛るようになったと」

「……はい…//」

咲椋は小さく頷いた。咲椋の耳は真っ赤になっていた。

「えっと…沙希さんは…?」

咲椋は沙希に逆質問する。

「私はね〜」

沙希は斜め上を見ながら思い出すように続けた。

「小学生の時に泥棒に縛られたことかな〜」

「ど、泥棒に…!?」

「うん。お留守番してるときに泥棒が入ってきてさ、そのときに初めて縛られちゃったんだよ。」

「どんな縛りを…?」

「当時はさ縛りの知識なんてないからガムテープで縛られるのかなぁって思ってたんだよ。」

「違ったんですか?」

「うん。麻縄。麻縄で後手縛りに縛られちゃってさ、胸の上下にも縄を巻かれて…」

「本格的ですね…」

「今思えばその泥棒は“緊縛”の知識を持ってたんだと思う。足も縛られて…口にはガムテープで猿轡もされちゃったよ。」

「そんなに…」

「極めつけはローターをパンツの中に入れられちゃってさ…」

「ろ、ローター…!?小学生に…」

「最初はくすぐったいだけだったけど…だんだんと気持ち良くなって…気づいたときには抵抗できずに縛られてること自体に興奮し始めて…」

「ごめんなさい…、嫌なことを思い出させちゃって…」

「全然大丈夫だよ〜、今となってはこうやって話せるようにもなったしさ。私としてもトラウマというよりはその事件をきっかけに自縛に目覚めちゃったしね…あはは」

沙希は少し照れながら頭をかいた。

「それが沙希さんのはじまりだったわけですね。」

「うん。そういうことだね。」

沙希はふぅと息を吐くとパタパタと手で仰ぎながら告げた。

「ちょっと暑くなってきたね。お茶持ってくるよ。」

「すみません…!私もお手伝いしましょうか?」

「咲椋ちゃんはお客さんなんだからゆっくり待ってて!そこの箱の中にSMグッズが入ってるからそれでも見ててよ。」

「分かりました!」

そういうと沙希はお茶を淹れにキッチンへ向かった。


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