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③ しばりしばられ 12

……時を遡ること数時間、横河原邸……


「んふふ〜それで今晩は咲椋ちゃんといっぱい遊ぶんだ〜」


『まったく…グループチャットで通話始めたと思ったら……』


「光姫も一緒に縛られる?」


『い〜や』


「そんな〜、どうせ暇でしょ?』


『残念ならが暇じゃないんだよね。今日は可愛い後輩とお泊まり会するから空いてないだよ』


『ふぇ…可愛いって…!?』


「優奏ちゃんとお泊まりするんだ!」


『いつも助けてもらってるからそのお礼をしたくて誘ったんだ。和奏も誘ったんだけど…』


『むふふ、私は友梨さんとお泊まり会なのです!』


「へ〜、和奏ちゃんと友梨ちゃんの組み合わせって珍しいね』


『和奏ちゃんにどうしてもって頼まれちゃったら断れないよ〜』


「ん?何か頼みごと?」


『友梨さんに縛っていただきます…!』


「ええ!?」


『縄抜けと捕縛術の練習に付き合っていただくのです…!』


『縛ったり縛られたりすることだったら私も力になれるかなって。光姫ちゃんじゃないけど私も和奏ちゃんたちにお礼がしたくってさ』


「うぅ…私だけ和奏ちゃんと優奏ちゃんの役に立ってないよ…」


『そんなことないです!次の機会があれば私のことを…し、縛ってほしいのです……!』


『わ、私も…!お姉ちゃんと一緒に縛ってもらえますか……?』


「もちろん!2人ともありがとう。うん、また今度たくさん縛ってあげるね!」


『よろしくお願いします!』


『(で…できれば股縄とかしてもらいたいなぁ…なんて…)』


『優奏ちゃん、何か言った?』


『み、光姫さん!?な、なんでもないですよ!!』


『そう?それなら良いんだけど…』


『ってなわけでそろそろ和奏ちゃんを縛る縄の手入れしないといけないから通話切るね〜』


「うん!お話に付き合ってくれてありがと!」


そうして沙希は通話を切ると、咲椋へのおもてなし料理をするべくキッチンへ向かった。


ピンポーン


その時、家のインターホンが鳴り響いた。


「もう来ちゃったのかな?」


沙希はなんの疑いもなしに解錠し、扉を開いた。


「どうも。」


そこには作業着姿の男の姿があった。


「えっと……」


沙希が対応に困っていると、男は物腰柔らかに尋ねた。


「水道管の修理に伺ったのですが…」


「あ、なるほどです。」


「ご家族の方は?」


「生憎、全員明日の夜まで帰らないんです…」


「そうですか…」


男の表情が綻んだ気がした。


「他の来客は?」


「お友達が一人来るくらいですね…、ってそれって関係ありますか?」


沙希は男の方に視線を移した。


「っ…!?」


「騒ぐな」


男は先に果物用の小さい包丁を突きつけた。


ガチャ…


男は家の中に入り、ドアが閉まった。


ガチャリ…


男は沙希から目線を離さずに施錠した。


「(この人…縄原の回し者ではなさそうだね…)」


不思議と沙希は落ち着いていた。こういった状況に巻き込まれることが日常化するなかで不思議と“慣れ”が生まれていた。


「(縄原はキンバク市長だけど、包丁を突きつけるとか私たちに危害が加えることはしないもん。)」


沙希たちを執拗に狙う縄原にも流儀はある。縄原と対峙するなかで彼女なりの美学を沙希は理解していた。


「よし、そのまま大人しくしていろ。」


男は水道管工事用に偽造したバッグから麻縄の束を取り出した。その縄は“緊縛”用の赤い麻縄だった。


「赤い縄…?」


沙希は無知を装って尋ねた。


「これはな、女を縛るために作られた縄だ。」


「私を縛るの…?」


沙希は男の目的を聞き出そうとしていた。


「女を縛るのがオレの性癖なんだ。」


「つまり、私を縛るためにこんなことを……?」


「少し違うな。目的は金品であってお前の身体ではない。下手な抵抗をしなければお前の身体を汚すことはないから安心しろ。」


「……。」


沙希は少しだけ安心していた。人身売買や性行為を目的とした人ではなかったからだ。


「気は済んだか?」


「っ……」


男は麻縄の束を沙希に見せつけるように垂らした。


「両手を後手に組んで、大人しく縛られろ。」


「……はい…。」


沙希は観念して両手を後手に組んで、男に背を向けた。


「縛ってください…。」


沙希は縛りを乞うた。


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