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月の兎は仲間同士で遠隔通信することが出来る。 それならば、なぜ師匠は私をこの家に置いてくれたのだろう? 自分たちの居場所を、私が月の都に伝えるとは思わなかったのか? 私は、思い切って師匠に訊いたことがある。 「貴方がそれをしていない事は見ればわかる」 師匠の言葉に心が熱くなった。 こんなにも信用されて...

夢を喰う妖怪がいる。 夢くらい大したことないと思うかい? とんでもない勘違いだ。 彼女は怖い夢を喰う妖怪とされているが、本質はそんな遊びじゃない。 彼女は選んでいるのさ、喰わない夢を。 彼女が喰うのは彼女にとって都合の悪い夢。 残っているのは彼女にとって利益のある夢。 君は失った事にも気づかず、彼女が喰...

雪娘は春の妖精の側にいるだけで常に力を奪われ続ける。 それでも雪娘は春の妖精の隣に居たいと願った。 雪娘は冬の力を自分の中に蓄積させ何層にも重ねていった。 彼女は修練の末に夏の日差しでも溶けない、硬い硬い白い岩となった。 The Snow Maiden is constantly deprived of her power just by being by the side o...

初めて箒で空を飛んだ時、親にそれを言ったら家中の箒を全て壊された。 その時は意味が分からずに茫然としたけど、今なら分かる。 私を守ろうとしたんだ。 人間の里には「人間」しか住むことが出来ない。 「妖怪と戦える人間」が人間の里に居てはいけないんだって。 魅魔様の受け売りだけど、そんなことを言っていたな。...

地下室に暮らす吸血鬼の少女は異変を感じた。 やけに館が騒がしいのだ。 様子を見に行くと妖精たちがままごとのようなことをしている。 どうやら館の主である完璧な姉が館に妖精を招き入れたらしい。 後に妖精たちは「妖精メイド」と呼ばれるようになる。 館が騒がしくなったことで 吸血鬼の少女はさらに地下深くに潜り...

ある漁村の人々は困っていた。 海の妖怪から毎日100匹の魚を捧げるように言われていたのだ。 それを見た優しい人魚は漁村の人々に言った。 皆さん、私の掌の上に移り住んでください。 そこならば海の魔物も手を出すことが出来ないでしょう。 人魚が海底の砂を掌ですくいあげ海面まで持ち上げると そこには立派な島が出来...

森の道具屋の店主は不愛想なことで知られている。 彼にとって道具屋の経営は道楽であり 要らない収集品の処分を行っているにすぎない。 売れないなら売れないでかまわない。 売れたらまた拾えばいいのだ。 彼はその日、大きな卵を拾った。 生物は専門ではないが彼は根っからの収集家である。 あいにく収集品で手元が塞が...

瀟洒なメイド長を自称する 十六夜咲夜の「メイド」としての腕前は高くない。 彼女はメイドとしてのふるまいを 妖精メイドたちに教えられた。 館の壁でロッククライミングをして レミリアの上に落ちたこともあるし レミリアの棺桶の蓋をニンニク砕きの代わりに使い レミリアを不眠症に陥れ 館の中で勝手にカフェを開いて ...

彼女、一日中庭の同じ席に座っているのよね。 門の来客がよく見えるあの席に。 誰かが来るのを待っているのかしら? 彼女はたぶん私たちの仲間よ。 新米の妖精メイドなんだわ。 でも羽根が無いような。 まあ!妖精が羽根を失くすなんて大変。 妖精メイドの先輩として色々教えてあげなくちゃ! さあみんな、行くわよ! 三...

嫌になったらすぐやめる。 妖精というのはそういうものだ。 頑張らない、努力しない 自分自身を「名前」で縛ることさえしない。 限りなく自由な存在。 そんな妖精たちが赤い館で「メイド」として過ごしているという。 その話に興味を持った天狗の記者が館に取材に訪れたが 彼女曰はく「妖精はただメイドごっこをして遊ん...

天邪鬼は単純に相手の言葉の反対を言うのではありません。 相手が内心もっとも「嫌がっている」ことをするのです。 私が世界をひっくり返そうとしたのは それを嫌がっている者がいたからです。 私が弱い者の味方だからではありません。 弱い者は弱さを言い訳に裏切ります。 私は私を裏切りません。 ひっくり返るのはいつ...

満開の桜は私の力が満ちた合図。 少女は力を失いたいと思った。 何の変哲もない無力な存在になりたかった。 このお仕事が終わったら、ご飯を食べて たまに隙間からやってくる不思議な友人と語らおう。 このお仕事が終わったら、ご飯を食べて 友人が作ろうとしている箱庭にアドバイスをしてあげよう。 このお仕事が終わっ...

上級悪魔の私は図書館の魔女の卑怯な罠で力を封じられ「小悪魔」へと退化した。 魔女は私に図書館の司書を命じた。 契約書がある限り魔女に逆らえない。 笑うしかない。 あまりに魔女の人使いが荒いので 勝手に魔女の名義で新しい「小悪魔」と契約してやった。 これで少しは楽が出来るかと思ったが 後輩の「小悪魔」は魔...

ついに、ここまで来ました。 憧れの赤い館の図書館の司書になれました。 私はこの図書館の魔女様に憧れています。 弱い使い魔だった私は厳しい修業をして ついに「小悪魔」へと進化したのです。 それなのに先輩の「小悪魔」はとても不真面目で 私の並べた本の順番を勝手に変えたり 魔女様に迷惑をかけてばかりいます。 ...

「私がこの村で一番貧乏なんて、あんまりです。 隣の家を私の家より貧乏にしてください」 「よかろう」 「私がこの村で一番貧乏なんて、あんまりです。 隣の家を私の家より貧乏にしてください」 「よかろう」 強い信仰心によって 村の真ん中に誰よりも貧乏な貧乏神が生まれた。 人々は何も手に入れていなかったが 自分よ...

「貴女は人間との距離が近すぎる」ってよく言われるよ。 でも、渡し船の上で 自分で引いたその距離が寂しいって たくさんの愚痴を聞かされてさ。 アタシの距離は、この小舟の大きさだからね。 愚痴くらい好きなだけ言いな。 向こう岸に着くまでいくらでも距離はあるんだ。 I am often told, “You are too close to peopl...

やれやれ、また財宝か。 ん?これかい 私たちにとって金銀財宝なんて宝じゃないから 持って行きたければ自由に持っていっていいよ。 持ちきれないなら仲間を連れてきたまえ。 そうだな、取り分を減らしたくないなら この場所の事は誰にも話さない方がいいだろうね。 もちろん家族にもだよ。 だから必ず身寄りのない者だ...

幸運はエンターテインメントでなければならない。 事故や不幸を未然に防いでも 感謝されるどころか恨まれ 鮫たちに追われるからだ。 だから鮫たちが不幸になるまで放置してから 親切そうな顔をして手を差し伸べる方が利口なのだ。 その方が利口なのだ。 そんなことは分かっている。 でも幸運のウサギは鮫たちが不幸にな...

彼女は結界が見えると言った。 結界とは舞台裏のこと。 手品のタネのこと。 そこに有ることは理解しているけれど そこに無いものとして意識から消すもの。 みんなが舞台上の演者を見ているときに 彼を持ち上げるロープを見ること。 目の前の事実と真実の境界に張られたロープを 彼女は結界と呼ぶのだ。 She said that sh...

みんな みんな 時間がない おどろいてる 時間がない みんな みんな 余裕がない おどろいてる 余裕がない だから歩く早さを ゆっくりにして 私に おどろいてもいいんだよ? そんな早さで おどろいたら 急に 止まれなくって 私に ぶつかっちゃうよ Everybody everybody don't have time You don't have time to be surpris...

自分が創造主の一人娘アリスの複製人形と知ったのは暫く経ってからだった。 私は私ではなく、昔のアリスの思い出だった。 アリスの威を借る人形。 糸が切れて動かなくなるまで踊る人形劇。 城のみんなは私に優しくしてくれたけど みんな私の後ろにアリスを見ていた。 私もアリスのように話し、アリスのように笑った。 み...

料理が口に合わない時に 「おいしいよ」と言いながら、二度と料理に口をつけない客と 「まずいよ」と言いながら、料理を平らげる客がいる。 どちらも正直者だ。 その味を覚えておいて欲しい。 私の事を忘れてしまったとしても。 If the food is not to your liking. Some customers say, "It's delicious," and never to...

星空を見れば自分の居る場所が分かるんだ、と彼女は笑った。 では彼女は力を手に入れた特別な人間なのだろうか? 私は違うと思う。 彼女は力を「失わなかった」人間なのだ。 初めて見た風景に感動し、興味を持ち、観察する力。 不思議を受け入れ、真っすぐな瞳でそれを面白がる力。 誰もが成長と共に失う力。 周りの人間...

「おはようございます!」 山彦は今日も大きな声であいさつをする。 山彦の言葉が君に響いて 君も山彦にあいさつを返す。 君の心に灯がともる。 「おはようございます!」 山彦は今日も大きな声であいさつをする。 君が返さなかった言葉は 君の心の中で乾いて消えていく。 山彦しょんぼり響かない。 「おはようございま...

母が迎えに来るまでの間のはずだった。 銀の剣を腰に差した少女が吸血鬼の館を訪れた。 門番が門を通し、妖精メイドが館に案内した。 母からの手紙を読む館の主は 少女と同い年くらいの少女の姿に見えた。 母が唯一狩れなかった吸血鬼。 少女の母は少女を無能な味方に預けるより 信頼できる敵に預けることを選んだ。 少...

みんなに好かれる少女がいた。 誰もが少女のために何かをしてあげたいと思うほどだった。 それは才能だったが問題もあった。 歩く道の困難をあらかじめ全てを取り除かれた少女は 学ぶという事を出来なかった。 周りの者に頼るだけで全てが解決できてしまった。 もしこの少女に、同じ年頃の同じような立場の友人が出来た...

「これは迷える霊ではないわね」 「獏のお土産なんて、どうせ碌なものではありませんよ」 「一式は揃っているのねぇ、ここをこうして」 「どう見ても足りませんね」 「壊れ夢を憑依させる器があればいいんだけど」 「なぜこっちを見ているんです?」 「ほら、貴方の妹が目を開けたわよ」 「半霊のスペアだからいいですけ...

○○は物心がついてから常に空腹を感じていた。 彼女の生まれた家は生活に余裕がなく、際限なく食べ物を求める○○は疎まれた。 誰もが、本人すら、○○を怠け者として扱った。 空腹を紛らわすため○○は山をさまよい、ついに倒れた。 誰もいない揺らぎから声がした。 目を凝らすと女の姿がおぼろげに見えた。 「あなたの居場所...

霧の湖に小さな緑の妖精がいた。 彼女はある日、氷の妖精と出会った。 他の妖精たちは自我の強い氷の妖精を避けたが 優しい緑の妖精は氷の妖精にも等しく接した。 氷の妖精はやがて緑の妖精に心を開き 自分の「遊び」に緑の妖精を誘うようになった。 その「遊び」は自分より強いものに挑み続けるというものだった。 緑の...
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