時計の針が19時を指す頃、俺はファミレスのドアを押した。
奥のボックス席に座る彩音の姿を見つけ、そちらに向かう。その隣にいる一人の女の子……。
(彼女……いや、彼が高橋、か……)
モールの人ごみの中で果ててしまった日の夜、彩音から相談のメッセージが届いた。
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『優斗くん……さっきのこと、見てた人がいたの』
全身の血液が脈を打つ。
『え……誰?』
彩音から届いたメッセージのスクショには、高橋の名前が表示されていた。
「高橋……!?」
以前、カフェで話を聞いた、彩音や姉ちゃんと同じ陸上部で、男子キャプテンだった男。俺と同じ境遇――ネットで購入した下着によって女体化してしまった高橋。まさか、俺たちの行動を見られていたなんて。
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けれど実際に目の前にいる姿は、俺の想像をはるかに超えていた。
ショートカットで艶のある髪、シンプルなワンピースに身を包み、男の面影などまるで残っていない。
「優斗くん、こっち」
彩音が俺を見つけて手をあげる。
俺はぎこちなく腰を下ろす。すると高橋が小さな声で口を開いた。
「……は、初めまして。わ、わたし、高橋です」
声も女の子らしく、でも少し卑屈に震えている。俺も挨拶を返す。
「……ああ。初めまして、相川です……」
あの日、ショッピングモールで見た一部始終を、高橋は語り始めた。
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一人でショッピングモールで買い物をしていた高橋。
その時、視線の端に彩音の姿を見つけてしまう。
同じ陸上部の女子キャプテン。女体化して逃げるように陸上部を去った自分にとって、彼女は会いたくない相手だった。
逃げるようにその場を離れようとした瞬間、見てしまったのだ。
彩音が一緒にいる女の子――つまり“俺”のスカートの中に、手を入れている姿を……。
(な、なんで……? こんな大勢の人がいるところで……あんなこと……)
視線は自然と、二人の姿に引き寄せられてしまった。
彩音と俺の姿が視界に焼き付く。
彩音の指がスカートの中を這うたび、俺の表情が小さく揺れ、耳まで赤く染まっていく姿を……。
(……わたし……見ちゃった……でも……これは……っ……)
その夜、高橋はスマホを取り出し、彩音にメッセージを送る。
『さっき女の子と2人で歩いてたよね?しかも倉島さんがその子のスカートの中に手を入れてまさぐってたよね……。その子も含めて3人で会いたいな』
送信ボタンを押した後も、指先の震えが止まらない。
(……送った……どうしよう……でも……もし……)
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黙って話を聞いていた彩音が口を開く。
「高橋くん、この子は私の中学の同級生なの。名前は相川“優斗”くん。名前からわかるとおり、元々男の子……だったの」
俺の耳まで真っ赤になる。
「……え、相川さんも……男の子……ひょっとして、わたしと同じ!?」
視線がぶつかる。彩音と一緒にいた女の子が自分と同じ元男だったという事実に、目を見開いたまま固まってしまった。
彩音は話を続ける。
「二人とも、今は女の子の身体なんだよね。……ネットで購入した下着で変わっちゃったんだよね……」
高橋は視線を落としたまま、少し震えている。
「……相川さん、聞きたいことがあるんだけど……」
小さな声で高橋が切り出す。
「え……?」
「性欲って……どう……?」
突然の質問に、心臓が跳ね上がる。
元男同士、女の子の体になって、あの事を聞かれるなんて……。
俺は言葉を選びながら答える。
「ネットでも噂されてるけど……男の時のようにそれなりに性欲はあるし……女の子の身体が気持ち良すぎて……今は彩音ちゃんのおかげでなんとか……」
高橋はじっと俺の言葉を聞き、頬を赤く染める。
「……わたしも、そうなの。ずっと抑えてるんだけど……常に身体が……その……疼いちゃって……」
小さな吐息が漏れる。互いに、元の性別では想像できなかった感覚に戸惑いながらも、どこか快楽を求めていることを自覚する。
彩音は二人の様子を楽しむように微笑みながら、少しずつ距離を縮める。
「二人とも、正直に話していいんだよ。こうして話すだけでも、身体はじわじわ熱くなるでしょ?」
俺は息を整えつつ、頷く。
「……うん、なんか……自分でもどうしていいかわからないくらい、熱い」
高橋も同じように小さく頷く。
「……わたしも……同じ……」
その声に、俺の身体もピクッと反応する。
彩音が手を伸ばし、俺の手を軽く握る。
「ほらね、優斗くん。高橋くんも同じだよ。だから、二人とも恥ずかしがらなくていいの」
俺は視線を逸らせず、胸の奥がじわじわ熱くなるのを感じる。
高橋も、少しずつ自分の殻を破るように、身体を開いてきている。
「……あの……」
高橋が声を震わせながら言う。
「その……わたしも……人に触られて感じてみたい……」
俺の身体も、彩音の手に触れられたときの熱を思い出し、自然に反応してしまう。
彩音は微笑みながら、二人の間に軽く手を置く。
「じゃあ……今から三人で、もっと楽しもうか」
その言葉に、俺たちは互いに見つめ合い、緊張と熱が入り混じったまま、ファミレスを後にする。
◆
ホテルの明かりが近づくにつれて、三人の心も身体も、じわじわと高まっていった。
部屋に入った瞬間、彩音が俺にささやく。
「優斗くん、今夜は高橋くんとも……いっぱい楽しもうね」
俺と高橋は互いに頷き、目線を交わす。
ここから先は、もう理性だけでは止められない……。
【11章へつづく…】
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