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桜梅桃華@女装・TSF小説
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メンズメイク体験から始まった、僕の女装堕ち:8

下着屋さんデビュー

ショッピングモールの二階。

ガラス越しに見える店内は、可愛いを詰め込んだ宝箱みたいだった。

ピンク、ミント、クリーム。

ふわふわの照明と、花びらみたいな布たち。

――ここが、“女の子の下着屋さん”。


「さ、行こ」

凜が僕の袖を軽く引く。

その動きだけで、胸の奥がざわめく。

隣の真白はスマホをしまいながら笑った。


「男の子一人じゃ入れないよね〜。でも今日は女の子二人と一緒だから安心でしょ?」


「んっ……ま、まぁ……」

思わず小声になる。

通りかかった女の子二人がこちらをちらりと見て、思わずうつむく。

でも、凜はそんな僕の気持ちを察したのか、手をしっかり握っている。


「大丈夫だよ。ね?」

その一言で、足が勝手に動いた。



店内は、やさしいアロマの匂いが漂っていた。

棚に並ぶのは、レースとリボン。

淡い光の下で、ショーツやブラがまるでアクセサリーみたいに輝いて見える。

“下着”というより、“可愛い”が並んでいる。


――どうして、こんなに心が躍るんだろう。


心のどこかで、これは“僕のものじゃない世界”だと知っている。

それでも、視線が自然と惹かれていく。


「……ふふっ、嬉しそうだね」

いつの間にか隣に来た真白が、口の端を上げて言う。


「そ、そんなこと……」


「顔、にやけてるよ?」

凜もくすっと笑った。


「やっぱ可愛いの好きなんだ。ほら、この水色のとか似合いそう」


からかわれてるのに、否定できない。


「じゃあ、サイズ測ってもらおっか」

凜の言葉に、心臓が跳ねる。


「さ、サイズ……?」


「大丈夫。ここ、優しい店員さんばっかだから」


そのまま凜は店員さんを呼んだ。

黒髪にウェーブがかかった、落ち着いた雰囲気の女性。

穏やかに微笑みながら、


「いらっしゃいませ。ご試着ですか?」


「はい。この子、心が女の子なんですけど、今まで下着を着けたことがなくて。採寸、してもらえますか?」

凜が自然にそう言った。


その声に、僕の胸がきゅっと縮む。


――心が女の子。


その言葉が、まるで肯定の印みたいに響いた。


店員さんは少しも驚かず、にっこりと微笑んだ。


「もちろんです。こちらへどうぞ」



案内されたのは、フィッティング用の小さな部屋。


「じゃあ、測りますね。リラックスして」


店員さんがメジャーを手にする。

その仕草は、まるで美容師のように優雅だった。


「まず、トップバストから測ります」


メジャーが胸の上をなぞる。

服越しとはいえ、胸の形を意識してしまい、呼吸が浅くなる。


「息を吸って……止めてください。……はい、ありがとうございます」


短い沈黙。

指先が軽く当たるたびに、心臓が音を立てた。


「次はアンダーバストです」

今度は胸の下を通る。


ひんやりとしたメジャーの感触が肌を撫で、

“計られている”という事実が、奇妙にくすぐったい。


「……女性ホルモンは摂取されていますか?」

唐突な質問に思わず店員さんの顔を見た。


「えっ、いえ…特に……」


「そうですか。元々、お客様は体内のエストロゲンが多いのかもしれませんね。トップとアンダーの差が10cmありますので、しっかりAカップありますよ」

その一言に、顔が熱くなった。


“Aカップ”――その言葉を、男の僕に向けて言われるなんて。


恥ずかしいのに、なんだか嬉しくて、

息をするのを忘れそうになった。


「はい、終わりました。少しお待ちくださいね」



カーテンの外に出ると、凜と真白が並んで待っていた。

二人とも、まるでファッションショーの結果を聞くみたいな顔をしている。


「どうだった?」


「……その、“Aカップ”って言われた」

そう答えたら、凜が嬉しそうに笑った。


「やっぱり。前から何だか膨らみがあるなって思ってたの。Aカップもあると思わなかったけど」


凜も頷いて、


「自覚してこ。啓斗くんは“女の子の才能”があるんだよ」

その時、店員さんがブラをいくつか持って戻ってきた。


「こちらが今のサイズに合うものです。どれも着け心地が柔らかくて、人気ですよ」

手にしたトレーの上には、淡いピンク、水色、黒色に赤色のブラ。

小さなリボンが、きらりと光っている。


「ほら、啓斗。どれが一番“きゅん”と来た?」

凜の言葉に、思わず息を呑んだ。


“きゅん”なんて言われても……。

けど、目が勝手に動いた。


ピンクと、水色。

ふわふわしたレースが、どちらも優しくて。

指先で触れたとき、心の中に小さな音がした。


「……これ、が……いいかも」


「可愛い系が好きって、やっぱ女の子だね」

真白が手を叩く。


「そ、そんなこと……ないよ……」

言いながらも、口元が緩んでいた。

それを見た凜が、ふっと笑う。


「じゃあ、それ買おっか。初めての啓斗の下着だし。私からのプレゼント」

“初めての自分の下着”――その言葉が、胸の奥に響いた。



モールを出る。

ショッパーの中のピンクと水色が、歩くたびに擦れ合って音を立てる。

手に持つその軽さが、なんだか信じられなかった。


「ねぇ、啓斗」

凜が隣で囁いた。


「女の子って楽しいでしょ?」


「……え?」


「みんなで可愛い下着やお洋服を選んだり、おすすめのコスメの話をしたり……男だったらこの楽しみってわからないよね」


そう言って、凜は僕の手を握った。

その手の温かさに、

“女の子として扱われる”という現実が、優しく沁みていく。


気づいた瞬間、頬が熱くなった。

でも、嫌じゃなかった。


凜が笑う。

「大丈夫。次も一緒に行こう」


その声にうなずくと、

僕は小さく息を吸って、笑った。


――第9話へ続く。

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