最初に作ったのは刀だった。次は銃だった。黒猫の体を作り、今度は銀色の猫の体を。でも、そんなにうまくはいかない。私はその領域までたどり着けなかった。
......4年という時間を費やしても、それでもまだ届かなかった領域へ次こそは辿りつきたい。
「量産型のらきゃっと」(以後、ますきゃっと)はVtuber「のらきゃっと」の量産型3Dアバターで、VRChatではプレイヤーが自身のアバターとして使用できる。
のらきゃっとファンのVRCプレイヤーならば大勢が持っているアバターであり、ファン以外もその可愛さから多くのプレイヤーが使用している。1機居るとそのうち増えてインスタンスがますきゃっとだけになることも少なくない。
そんなますきゃっとだが、2019年に発売されて以来ずっとアップデートがなかったがとうとう近いうちに来るそうだ。
今回のアップデートの目玉はなんと「公式素体の追加」である!
今更素体の追加?と思うかもれないが、これはますきゃっとにとっては大ニュースである。何故ならば、未だにますきゃっとには公式素体がないのだから。
今のVRCでは販売されるアバターには素体、つまりは裸体の付属は水着の着用やアバター専用衣装の作成などのために当たり前のようになっている。しかし、2019年頃のアバターには素体がないということはあり得る話だった。
当時はVRCで使える3Dモデルにはポリゴン数の制限があり、2万ポリゴン以下でないと使うことが出来なかった。そのために服で見えなくなる素体の一部分はそもそも作られてないことが多かったのだ。
ますきゃっとも同様で首と手と腰部分しか素体がない古い構成だったのだが、それが3年後しに追加されるとなって界隈でも大きな話題となっている。
VRCをプレイしている人ならば見かけていると思うが、素体のないはずのますきゃっとが着替えをして水着などを着ている姿を見ていると思う。
Q.素体がないはずなのに素体があるのはどういうことか?
A.なければ作ればいいのだ。
基本的に脳筋であるのでなければ対応できる形で作ればいい...と私は考えた。
幸いなことにBlenderで3Dモデルをいじって刀やら銃やらアバターやらを作っていたので、3Dモデルの素体を作ることも問題はなかった。
問題としては、その頃はまだ着せ替えを行う手法や説明などがほぼなかったことだ。
それらの問題を解決して販売したのがこのロリータワンピだった。
2019年5月6日にBOOTHで発売したこのモデルは、ますきゃっと向け初の着せ替え衣装だと思う。きせかえ用の衣装と首のすげ替え用素体を合わせたモデルだ。
素体のないますきゃっと向けに素体ごと交換して着せ替えを行えるようにしたこのモデルは、当時そこそこに注目されて発売月に66着の販売数が出た。
着せ替え用の説明書を付属した成果もあり、結構な人数がVRCでも着せ替えをした姿を見せてくれたのを覚えている。これが着せ替えの始まりで私が3Dモデラーとして活動を本格化させたきっかけでもあった。
ロリータワンピの販売から時間が経って、様々なVRC用アバターにも着せ替え文化が大きく広がっていった。
VRC自体のポリゴン数緩和などもあり、販売されるアバターには素体が付属するのが当たり前になったのが、着せ替え文化を加速させた。
そこで問題になっていったのは人気がありつつ、普及もしているますきゃっとに公式素体がなかったことと、着せ替えに必要な「首の挿げ替え作業」が複雑だったことだ。
一般的なアバターの着せ替えは、Unityで服のメッシュを消して着せ替え用の衣装モデルをツールでワンクリックするのみである。
しかし、ますきゃっとの着せ替えにはまず素体を追加する必要があり、その作業にはUnityでの面倒な工程があった。Unity慣れしてない人にとっては非常に大変な作業で、ますきゃっとの導入や改変を考えさせる要因として問題となっている話を見かけていた。
ますきゃっとについては私が販売した素体付きのロリータワンピの発売後、数人の素体付き衣装などの販売があったが、公式から素体が追加されることは残念ながらなかった。その間に私の販売した素体も2度のアップデートをして、「TS_sotai」という名前の素体としてますきゃに200体近くの普及がされるようになった。
というか、同梱のシェーダーのアップデートやSDK3への対応、PBへの適応などVRCへの対応アップデートが一切なかったことについては、人気モデルとしては対応不足だったのでは?とノラネコP問いかけたいところである。
個人で運営している事や、モデルの製作者が別にいることを考えても最新のシェーダーverの入れ替えすらしないのは今後も不信感につながると思う。
そんな中、2022年3月にますきゃっとのアプデがのらちゃんから告知された。
https://twitter.com/VR_Girl_NoraCat/status/1499968339464306689?s=20&t=rg7asUalaJA3yqeOm6aEkA
アプデ内容には素体追加があり、ねずみさんもますきゃっともようやくか!と騒いだ。
また、以前には販売しているますきゃっと向けの「TS_sotai」を無駄にしないよう、活かせる形でアプデをするとのらちゃんから発言があったのを覚えている。
https://twitter.com/VR_Girl_NoraCat/status/1499957262823333894?s=20&t=70rVFRpbD_IlUurMPMNqJg
そして、ここからが本題である。
とある日に、とある内容の提案がこよりちゃんからディスコードに届いた。
「TS_sotai4.0をますきゃっとの公式素体として同梱したほうが良いかもしれない」
モデルを作る人なら分かるが、既にあるものに形を合わせたりする作業というのは難しかったり面倒だったりする。提案というのは既に対応衣装が多く普及しているTS_sotai4.0を同梱したほうが良いのはないかということだった。
ぶっちゃけこの時点で激しく心臓が鼓動した。
TS_sotaiが公式素体に採用されるかもしれないというのは、非常に光栄で嬉しい事だ。今までもずっと衣装を提供したりして、のらちゃんの可愛さやますきゃっとを応援してきた自分にとってこれ以上の話はない。
のらちゃんの剣や銃、ノラネコPのボディの制作と関われてこれたが、また1段大きい貢献ができると思った。
......だから、私はこの話を断った。
私は結構自己主張が激しいし、顕示欲も多いほうだと思う。そうじゃなければ当初から3Dモデルを送りつけたり、DMで衣装の提供の話などを持っていかないだろう。
ただ、そんな自分でも分相応、自分の力量についてはある程度わきまえているつもりではある。
理由は2つある。
私は自身の「TS_sotai」が、今作れる自分の素体モデルが、ますきゃっとの公式素体として使われるのにクオリティが足りないと感じたのが1番目。そして、ますきゃの更新の話をするねずみさんやますきゃの中でこよりちゃんが新しいボディを作るとみんなが期待していたのが2番目。
1番目は実に簡単だ。私のTS_sotai4.0は残念ながら今販売されている上位モデルの素体と比較して、クオリティは届いていない。ますきゃっとはVRCでは上位に入る有名モデルだと思うが、その公式素体としては届かないモデルだと思ってしまったのだ。
衣装のモデルであればまだ躊躇もなく提案を受け入れただろうが、素体のクオリティに関しては残念ながら満足できるものではなかった。
2番目は1番目を考慮した上での話だ。要は、ねずみさんやますきゃっとが期待しているのはこよりちゃんの作る新しい素体であって、私のTS_sotaiは望まれていないと自分が思ったからだ。
これに関してははっきり言ってみんなの期待している重圧に勝手に自分が耐えられなかったというのが実際だ。
本当にTS_sotaiが採用されて、公式に発表された時に誰かから「TS_sotaiが素体なのか?」と思われる。そう思うと是非に!なんて言えなかった。私には1500機のますきゃっとの素体の製作者として受けきれる技術と度胸がなかった。
断った時、悔しくて涙が出た。
自分の技術の無さが全て悪いのだから。
その後、結果としてはTS_sotai4.0で普及した衣装などを低負担で使えるようにTS_sotai4.0をイメージとした新素体を作るということに話が進んだ。シルエットもだいぶTS_sotaiに近く、かといって細部はしっかりとクオリティアップされているので、非常に良い素体だとテストした時に思った。
新素体の制作自体はこよりちゃんであるが、そこにイメージとしてでも私のTS_sotaiが影響したのなら、これが現状での上出来な結果だと思う。
出来るならば次こそは、また何らかの形でのらちゃんやますきゃっとの3Dモデルに関わりたい。
その為に私はまだまだ3Dモデルの衣装や、武器などを作っていくと思う。
現状は3Dモデラーとしてフルタイムで活動させて貰っていることもあり、みんなの協力があってこその活動だが、これからも是非応援してもらいたい。
4年間の間、魅力的な姿を見せる為に努力するその背中を少しでも支えられたらと思う。
そして、次こそはもう少し支えられるように努力をしよう。